*何もないからコーフン!
★ 何もないからコーフン!
8月2日(木) 超ド快晴 8日目
日の出少し前に起きたが、コーヒーを沸かしたりで、出発は8時20分。またまた昨日と同じ360度何もなくアップダウンをしながらどこまでも続く直線。真っ青な空。超どピーカン。この広い空に雲が1つもない。両脇の平原はフラットで、甲子園球場の何倍とか、よく広さを表わすのに使われるが、そんな気にもならない。ほどよい硬さの土で、そこにラインを引くだけで、野球場や陸上競技場が何十万とわけなくできる。
『ふり返れば地平線』という北海道ツーリングの本があったが、ここは『どっちを向いても地平線』。それにしても、何かがあるから感動する、と言うのは分かるが、何もないのを見てコーフンし、感動すると言うのもおかしなものだ。
そんな訳で少し走っては写真を撮ったり、ビデオを構えて走ったりでいつものことながら200kmまでは、やたら時間がかかった。
やがて、彼方に灰色の煙が見えてきた。内陸の鉱山の町、マウント・アイザだ。緑の木々がある公園が印象的で、さながら砂漠のオアシスを抱彿させるこの町は、妙に人が懐かしく思えるところだった。昨日からの700km程の距離で、こんなに多くの人間は見たことがない。それほど人や町が見当たらない道中だった。ここで給油をしたが、このペトロスタンドには、バイク用のオイルがなかったため、バイクショップを聞いてそこで2度目のオイル交換をする。これから内陸に入って行くと、オイルはネックだ。ケチらずいいものを使おう。
マウント・アイザからさらに西へ、カムウィールという町へ向かう途中、小さなアリ塚が現われた。無数と言えるほど沢山あるのだが、本当に不思議なことに、俺にはその1つ1つが仏や観音、子供を抱いた地蔵にまで見えた。全てがこちらを向いて微笑んでいる。そんな気がした。心理学では、自分の心の中にあるものがそこに写し出されるのを投影と言うが、ならば今日の俺の心には仏がいたのか。バイクから降りて、数枚の写真を撮ったが、現像してそこに写っているものは果たして何だろう。
ところがエンジンがなかなかかからない。最近こんなことはないのに……。
「はーっ」
ため息をついて下を見ると、タンクとシートの間にカメラの電池カバーが落ちてはさまっていた。もしすぐにかかってスタートしていたなら、失っていたに違いない。その後、キック1発でかかった。“仏の御加護”とは思い過ごしか。
西へ進んでいる分、日の入りが少し遅くなっている気がする。5時半、カムウィールに到着。もう少し先へ進もうかと思ったが、次のキャラバンパークまでは400km程あるとのこと。コリンに聞いて以来、夜間走行は危険過ぎる、と、もう何人にも聞いていた。その言葉通り、今日もたくさんのカンガルーの死体を見た。前夜、長距離バスかロードトレインにはねられたのだろう。2~3体が5~10m位の間隔で転がっていたところもあった。奴らはライトに向かって飛び込んでくる。その為この国のアウトバックを走る車はほとんど、前部にカンガルー・バーと呼ばれる大型のバンパーを取り付けている。今日見た死体の大きさくらいの奴が、バイクに突っ込んできたら、こっちの命だって危ない。
少し早いが、今日はここでテントを張ることにした。キャラバンで移動している家族が多い。大型のテント設営や食事の手際が実にいい。楽しみ方も控え目で、テープやCDを鳴らし続けておくということもない。大人も子供も話し、笑いながら、受け持ちの作業をやっているし、気さくですぐにマイト(友達)になれる。
彼らがビールを飲んでいるのを見て、この2~3日アルコールを補給してないことに気づいた。内陸での緊張感からか、本当にすっかり忘れていた。近くの酒場で、缶ビール(VB)2本を仕入れ、飯を炊きながら喉をうるおす。内陸ということもあってか、値段はシドニーの倍。それでも1缶2.5ドルだから日本よりちょっと高いくらいか。
それはそうと、今夜のテントサイトの料金をまだ払っていない。いつのまにか入り込んでしまっていた。あまりに堂々としていたので向こうも気づかなかったのかな。ま、いいか。ゴメンネ、管理人さん。……これで本当に仏が住んでいるのだろうか。
カムウィール・キャラバンパーク泊(タダ)
本日の走行 Richmond ~ Camooweal 602.7km
次回「オー・マイ・ゴッド!!」へ続きます