北米旅⑥ *弟の粘り強さに…
2010年04月08日(木曜日)
*弟の粘り強さに脱帽
この国で国際免許で車やバイクに乗るのは、3カ月以内の滞在者だ。3カ月を過ぎれば、カナダの免許を取らねばならない。3カ月までの観光ビザで来ている住所不定の男に信用はない。日本での任意保険の長期無事故証明書を持参していたが、あまり信用が増したようには思えなかった。先進国日本で用意されたものは、世界中どこでも水戸黄門の印籠の如く威力がある、とまでは思っていなかったが、ここまで信用されないとガックリくる。俺は、
「もういいから他を当たろう」
と、弟に合図しようと思った。しかし、弟は粘り強く食い下がって、何か突破口を見つけだそうとしていた。その姿に俺もすぐに思い直して、信用が少しでも得られるように合いの手を入れた。そのうち、契約は途中解除でき、払い戻し金もあるとの情報を引き出せた。契約するならこれしかない。そしてついに、870カナダドル(6万900円)で話がまとまった。嬉しいのと同時に、弟の姿勢に教えられた。俺が5つ歳上だが、長年海外で苦労し鍛えられた弟は、俺の予想以上に成長していた。
日頃塾や専門学校などで、生徒相手にえらそうな事を言っていても、活動する場が変わればこの始末だ。俺はいつの間にか温室育ちになりつつあったのだ。語学力の問題だけではない。精神的に足りない何かを感じた。これは今回の旅のテーマになりそうだった。
車で10分くらいの所にある、ナンバープレートを発行してくれる事務所に直行。俺の列は、中国系の女性が係官だった。
「いい番号よ。3がついてるわ。中国では、3と8はラッキーナンバーなのよ。日本でもそう?」
ナンバープレートが手に入っただけで、嬉しさがこみ上げ、何でもOKになっていた。その質問にも、にこやかに、
「ええ、そうです」
と答えた。ラッキーナンバーは人によって違う、というのが俺の考えだったが、別にこだわらなかった。自分の誕生日や今日の日付で馬券を買い、当たればそれがラッキーナンバーになる。パチンコをする人なら7や3か。マイナスイメージでとる人は、4は『死』だから縁起が悪いと言うが、『幸せを運ぶ』のは、4ツ葉のクローバーだ。俺はプラスにとりたい。1月1日は元旦でおめでたいし、八は末広がりだし、ラッキーナンバーはきりがないほどある。
彼女の言ってくれた幸運の番号3は、俺のバイクも無事に旅を終える事ができる特別な番号のように思えた。
ガレージで、ナンバープレートを取り付けた。
…次回『今この時を大事にしたいから』に続きます