前原弘昌のバイク旅

*快適オフロード

2010年01月17日(日曜日)

快適オフロード
8月11日 (土) 快晴  17日目
 「うー、寒っ」
 外がほんのり明るくなった頃、目が覚める。キャサリンはもう熱帯だが、ベッドルームの天井で一晩中扇風機が回っていると、明け方は少し寒いくらいだった。
 ここより20~30分の所にキャサリン・ゴージという渓谷がある。そこでカヌーを借りようと思っていたのだが、1人用は全て貸し出されていて、12時まで戻らないと言う。それまで待っていても、渓谷の往復に4~5時間掛ければ、ここでもう1泊ということになる。旅の全体のペースをまだ掴めないでいる俺には、ここは諦めるしかなかった。まるで次の旅行の下見みたいな急ぎ旅だが、それも仕方がない。今日の目的地、カカドゥへ向かおう。

 パインクリークの手前、100kmほどの所で、反対側の道端に自転車を止めて、いや倒して、腰を下ろしている青年を見つけた。顔からして、日本人だろう。ちょうど眠くなっていた時だったので、行き過ぎてからUターンしてそばに止めた。榊原峰之君。大学をやめ、ここまでやって来て、既に大陸横断に成功、現在縦断に挑戦中だとのこと。それにしてもこの暑い中、変わりばえのしないだだっ広い風景の中を、1日100kmも進むのは大変だろう。自分で選んだとはいえ、これも凄い旅だ。
 パインクリークで給油している時、カカドゥからやって来た日本人ライダーに出会った。情報をもらう。ここからの道はダードだが、XTなら大丈夫だと言う。

 スチュアートハイウェイを右に折れ、少し走っていくと、アスファルトが切れた。ここからは埃の巻い立つオフロードが延々続く。ところがフロントのサスはガタガタ。おまけに今日は荷物が後ろにより過ぎていて、出発時から気になっていた。無茶苦茶不安定な走行になる。50km/h程にスピードを落としても、転倒の危機が何度もあるほどだ。だんだん身体がこわばってくる。
「俺はこんなに下手だったのか」
 この道へ入ってきたことを後悔する。しかし、もう後戻りする気にはならない。
 思い切って止めて、一番重いバッグと工具をタンデム(2人乗り用)シートに乗せ、後ろのキャリアには水タンク、テント、マットといった軽いものを乗せるよう積み込みをやり直した。本来ならばこれが当り前なのだが、今までほとんど舗装路だったので、ついつい甘い積み方になっていたのだ。ついでにジーンズとスニーカーという軽いいでたちも、一応ブーツだけは履いておくことにした。捻挫や骨折でもしたら、もう目が当てられない。怪我はしても最小限に留めなければ。ところが、その後の走りやすいこと。思わず、
「うーん、これ、これ!!」
 と、叫びたくなるほどだった。リアタイアなど少々流れようが、軽くコントロールできる。むしろ意識してスライドさせて喜ぶ。一昨日エアーズロックからの帰りに道路脇に突っ込んで、危うく大怪我をしそうになったことがあったばかりだというのに、ついついノッてしまう。
 とにかく、百数十キロ続いたオフロードも、随分と楽しむことが出来た。マシンも、土ぼこりがいっぱい付いて、すっかりオーストラリアの大地を走る“それ”らしくなった。

 4時過ぎに、イエローウォーター・クルージングの予約事務所のあるクーインダという所へ到着した。今日のクルーズはもう満員で終了とのことで、明朝1番のを予約する。6時30分集合だ。ここまで来たのだから、野生のクロコダイルにもお目にかかりたいものだ。ここは沢口さん達からも勧められていた所だ。
 まだ陽は高い。いつもならまだ走り続けるところだが、すごくくつろげそうな広い芝生とテーブル、椅子もある。おまけにビールまで売っている。これで決まり。ビールを飲みながら、日本の友人にハガキを数枚書いた。
 すぐ隣が、キャラバンパーク。早速申し込んで、テントを張る。シャワーを浴びて、赤土にまみれたジーンズとTシャツを洗い、夕食の準備。こういうことがまだ明るい内に出来たのだから、すごくゆっくり出来る感じだ。本当はこうあるべきなんだよな。
 飯を食べ、芝生に寝転がってラジオを聴いていると、近くの改造したトラックで旅しているおっちゃん2人が来て、色々と話しかける。
「明朝は起こしてやるよ」
「頼りにしている」
 と応えて、テントに引きこもり、こうして日記を付け始める。今夜もまた、満天の星空。サザンオールスターズだ。南十字星が光っている。

クーインダ・キャラバンパーク泊(5$)
本日の走行 Katherine ~ Cooinda 330.1km

・・・次回「ショック……!!」へ続きます。