前原弘昌のバイク旅

*GO TO THE BUSH!!

2009年12月18日(金曜日)

★ GO TO THE BUSH!!
8月9日 (木) 晴のち超ド快晴  15日目
 永原さん、高橋さんとビールを飲みながら朝食をした後、別れを告げて出発。ロックをバックにツーリングスタイルで写した写真が無かったので、まずサンセットビューポイントに向かった。数枚、オートシャッターで撮った後、この雄大で神秘的な岩に最敬礼。3泊4日と俺にしては長期滞在だったが、存分に楽しんだこのウルル・ナショナルパークを後にした。

 引き返して来て、11時にユララを通過し、アリススプリングスを目指しひたすら走る。ほんのわずかのアップダウンを繰り返しながら、東へまっすぐな道が続く。
 だが120km/hで走行中、ちょっとボーッとしていたのか、運転を誤り、アスファルトからはずれて道路脇のダートへ乗り入れてしまった。いっぺんに目が覚めた。粗い石がゴロゴロしている。
「ぐっ!やった?!」
ちらっと頭をよぎったマイナスのイメージを慌てて振り払って、
「絶対、転ばん!」
 と膝と足首でバイクを挟み付け、ハンドルはグッと押さえつけて、必死にコントロールする。下手にハンドルを切ったりすれば、即転倒だ。そのまま200~300mは走ったか、何とかアスファルトへ戻すことが出来て、事無きを得た。
「いけねぇ、いけねぇ」
 まだまだこんなところで、身体もバイクも潰すことはできない。適度な気を張っておかねば。

 4時過ぎ、476km走ってアリススプリングスに到着。先日のアンポールの給油所で、オイル交換を済ませ、ペトロを満タンにする。この前T/Cを使わせてくれたここのおじちゃんは、満面の笑みで迎えてくれ、俺が無事にエアーズロックへ行って帰って来たことをとても喜んでくれた。
 町全体が見渡せる軍隊の記念碑が建っている丘、アンザック・ヒルへ上った。この町で1泊するか、先へ進むか、町を眺めタバコをくゆらせながらしばらく迷った。
 5時10分、再び走り始めた。まだ陽は高かったので、エアーズロックでゆっくりした分、とにかく100kmでも200kmでも先に進んでおくことにしたのだ。
 6時半頃日は沈み、夜の走行となる。コリンの言葉が浮かんできた。動物の飛びだしで危険なため、なるべくやりたくなかったが、1回通った道でもあり、気持ちはすでにテナント・クリークへと向かっていた。カンガルーが突然飛び出して来ても対応できるよう、スピードは80km/hに落とし、道の両側に視線を注ぐ。もっとも、もし飛び出してきたら、おそらく避けられなかっただろう。普段のスピードより4~50km/h落としているから、感覚的にゆっくりと感じられるだけであり、80km/hはけっこう速い。
 時々牛が路上に寝そべっている。アスファルトには昼間の地熱が残っていて、こっちの方が温かいから夜になると出てくるのだ。うっかりしていて、ぶつかりでもしたらえらいことになると、注意はしていたのだが、30センチぐらいのとかげをひいてしまった。直前で見つけたのだが、安全のため、避けるより上を通過することにしたのだ。グニュッとした、なんとも言えぬ後味が悪い感触。さすがに疲れが溜まってきて、居眠りしそうになる。
「もう限界!」
 と、130kmほど手前のキャラバンパークへバイクを止めた。赤やオレンジの裸電球がへいの外にズラーッと垂れ下がっている。
「テントだけどいくら?」
「6ドル」
「シャワーも使わないし、テントを張るだけなので安くならないか」
 すると、2人ほどの酒飲みの相手をしていた女将が、
「Go to the bush!(やぶへお行き)」)
 疲れた旅人にムチ打ち、投げ捨てるような冷たい言葉。怒りを引き起こすホルモン、ノルアドレナリンが急激に分泌された。
「コノヤロー、誰が泊まってやるかっ!!」
 だが、言葉を飲み込んだ。出せばあとが抑えられない。言い方だけでなく、顔も冷たそうで醜い女だった。日本円に直すと、僅か700円ほどなのだ。安くしてもらったって知れている。金の問題じゃなかった。こういう時は、理性的な金銭感覚は働かないものだ。疲れた心を包んでくれる優しい情けがあったなら、多分俺はそこで飯を食い、酒も飲んだかも知れない。多少なりとも売上に貢献するわけだ。人の心理とはそのようなものだ。
 こうなると、本当にブッシュキャンプ(道沿いの背丈の低い藪の中にテントを張るキャンプ)がやりたくなった。風は強いが、空には一面、星が輝いている。
 とか何とか思いながら走って、11時35分、テナント・クリークYHAに着いた。例のごとく、食堂にはまだ人がいて、賑やか。懐かしい顔ぶれは、変わっていない。ニュージーランドのジムやディオン、もちろんあのダニエルもいる。あのとき、すでにここで長期滞在中だった東京の山村まどかさんは、
「まだ出発出来ないでいる」
 と、すっかりここの住人になりきっていた。この前ここで会った上田さんと大麻さんは、ダーウィンから戻ってきて、昨日エアーズロックへ向かったとのこと。日本では廃車寸前の様な車で、2人で旅している青年達だ。途中ですれ違っていたかも知れない。話は尽きなかったが、もうクタクタ。部屋に入ることもできたが、前庭の芝生にテントを張った。今日はこうして寝たかった。ついに、2日分走ってしまった。

テナント・クリークYHA前庭泊(タダ)
本日の走行 Yulara ~ Tennant Creek 988.6km

次回「公務員採用基準に?」へ続きます